ななーる訪問看護デベロップメントセンターの研究員 石川武雅による研究論文が、学術誌『厚生の指標』に掲載されました。
本研究は、日本全国の全1,741市町村を対象に2015年~2021年のデータを用いて、訪問看護事業所数の変化が入院医療費および総医療費に与える影響を分析したものです。固定効果モデルによるパネルデータ解析の結果、訪問看護事業所の増加は医療費の削減ではなく、むしろ医療費の増加と有意に関連していることが明らかになりました。
この結果は、訪問看護の供給拡大が短期的な医療費削減に必ずしも直結しない可能性を示唆しており、訪問看護の質の向上や標準化、診療報酬制度の見直しなど、多角的な政策対応の必要性が提起されています。医療費以外の側面――たとえばQOL向上や在宅療養継続など――も含めた総合的な評価が求められます。
研究概要
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論文タイトル: 訪問看護事業所の増加は医療費削減に寄与したか:2015年~2021年の全市町村におけるパネルデータ解析
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著者: 石川武雅(テキックス株式会社 ななーる訪問看護デベロップメントセンター)、髙島佳之(梅花女子大学)
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掲載誌: 厚生の指標, 2025年, 72巻5号, pp.8-13
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研究の目的: 市町村単位のパネルデータを用い、訪問看護事業所数の増加が入院医療費および総医療費に及ぼす影響を定量的に検証
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主な結果: 訪問看護事業所数の増加は、入院医療費(係数: 627.4円、p < .001)および総医療費(係数: 857.9円、p < .001)ともに有意な増加と関連
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結論: 訪問看護の拡大は短期的には医療費削減に寄与しない可能性があるが、QOL向上など他の価値も含めた包括的な評価が必要
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