ななーる訪問看護デベロップメントセンターの石川武雅が筆頭著者を務めた研究論文が、国際学術誌『BMC Nursing』に掲載されました。
論文タイトル
Guideline-informed AI chat access and perceived mental effort in a simulated home-visit nursing task: a randomized controlled trial
掲載誌
BMC Nursing
論文概要
本研究は、訪問看護師が臨床判断を行う際に、診療ガイドラインを参照する生成AIの利用環境が、精神的な負担感や課題の難しさ、回答の正しさに対する自信にどのような影響を与えるかを検証したランダム化比較試験です。
日本の訪問看護師140名をAI利用群と非利用群に無作為に割り付け、105名の完了者を分析しました。
参加者には、独居の慢性心不全患者を想定した事例を提示し、患者の状態のアセスメントや訪問時の観察項目、ケアの方針について回答を求めました。
AI利用群では、心不全に関する10種類の診療ガイドライン等を登録したNotebookLMを使用できるようにし、非利用群では外部資料を参照せずに課題に取り組んでもらいました。
分析の結果、AI利用群では非利用群と比較して、課題に取り組む際の精神的な負担感が有意に低く(調整後群間差 −1.13点、95%信頼区間 −1.81~−0.45)、課題を難しいと感じる程度も低いことが示されました(−0.74点、95%信頼区間 −1.37~−0.12)。
また、自分の回答が正しいという自信は、AI利用群で有意に高い結果となりました(+0.71点、95%信頼区間 0.14~1.27)。
主な論点
- 診療ガイドラインを参照するAIを利用できる環境では、臨床判断を伴う模擬課題における主観的な精神的負担感が低かったこと
- AI利用群では、課題を難しいと感じる程度が低く、回答の正しさに対する自信が高かったこと
- 診療ガイドラインなどの専門的な情報を、AIを通じて参照できる仕組みが、訪問看護師の臨床判断を支援する可能性
- 一方で、本研究は回答の正確性や臨床判断の質、安全性を評価したものではなく、AI自体の独立した効果も明らかになっていないこと
本研究の意義
訪問看護師は、患者の自宅という限られた環境の中で、他の医療専門職にすぐに相談できない状況でも、さまざまな臨床判断を求められます。また、診療ガイドラインなどの専門的な情報を、その場で確認することが難しい場合もあります。
本研究は、こうした訪問看護の特性を踏まえ、診療ガイドラインに基づく情報をAIを通じて参照できる環境が、看護師の主観的な負担を軽減する可能性を示したものです。
ただし、本研究はWeb上の模擬課題を用いた探索的な研究であり、実際の訪問看護現場での有効性を示したものではありません。また、AI利用群と非利用群ではガイドライン情報へのアクセス条件も異なるため、AIそのものの効果を切り分けることはできません。
今後は、AIによる支援が臨床判断の正確性や安全性、ケアの質にどのような影響を与えるかについて、さらに検証する必要があります。
本研究は、訪問看護における生成AIの活用について、臨床判断の質だけでなく、看護師が判断を行う際の負担という観点からも検討する意義を提起する研究です。
※本研究は公益財団法人フランスベッド・ホームケア財団、令和7年度研究助成を受けて実施しました。
論文の詳細:https://doi.org/10.1186/s12912-026-05418-w
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