こんにちは。小玉です。
本日は、International Journal of Nursing Studies (Impact Factor : 5.8) から、
”Home care nurses’ identification of patients at risk of infection and their risk mitigation strategies: A qualitative interview study”
「訪問看護師による、感染リスク患者の特定とそのリスク軽減戦略:質的インタビュー調査」
の論文をご紹介します。(本文はこちら)
「問題提起」解決に取り組んだ問題はなにか
在宅医療における感染予防に関連研究は不足している。したがって、
① 訪問看護師が感染リスクの高い患者を特定するかどうかとその方法
②感染リスクを軽減するための戦略
を明らかにすることを目的として研究を行った。
「必要性」なぜその問題が重要なのか、なぜ取り組む必要があったのか
アメリカで在宅医療を受けている患者の予定外入院の原因の17%を感染症が占めている。
しかしながら、在宅医療環境における感染予防と介入管理をサポートするためのエビデンスやガイドラインはほとんどない。
「方法」どのようにして解決を図ったか
対象:アメリカ ニューヨーク州で訪問看護を提供する正看護師・准看護師の50名
期間:2017年12月~2018年9月
調査方法:調査員が対象者に電話し、下記の質問をし、その回答を主題分析(パターン分けし、分析・解釈する分析方法)を行った
・何が人々を感染の危険にさらしていると思いますか?
・在宅医療の環境下で感染予防と管理を行うのに何が役立ちますか?
・在宅医療の環境下で感染予防と管理を行うのにどのような障壁がありますか?
・現在、感染リスクをどのように評価していますか?
・在宅医療関連の感染を防ぐために何をしていますか?
・初回訪問の前、訪問中、および患者の訪問期間全体を通して、患者の感染リスクを評価するためにどのようなリソースを頼りにしていますか?
・感染リスクが高いと思われる患者に対しては、看護計画を違う方法で立案しますか?その場合はどのようにしますか?
・感染リスクが高いと思った患者の例を教えてください。また、その人の看護計画をどのように変えましたか?
・感染リスクが高い患者に対して、なにか介入方法を変えますか?
「結論」どのような結果が得られたか
【患者の感染リスクの評価】
リスクを評価するための情報源:退院時の紹介文書、患者・介護者への聞き取り
感染リスクが高いと考える因子:高齢・糖尿病・脱水症・栄養不足などの免疫系に影響を及ぼす因子と、カテーテルや創傷など感染の入り口になりやすい因子
患者の知識、理解、行動:看護師は、病状や体調に加えて、患者の病気や感染リスク、感染予防に関した知識と理解が感染リスクと密接に関連していると考えていた
環境的・および社会的要因:家が汚れている(虫や動物が住み着いている、ごみが散乱している)、家に水道や流し台がない、ペットと暮らしている、介護者が感染予防のアドバイスを聞いてくれない
【リスクの評価プロセス】
「感染リスクを評価しよう!」と意気込んで評価しているのではなく、患者の全体像を把握していくなかで、感染症のリスクを把握していた
【感染リスクを軽減する方法】
主な感染予防策は患者と介護者の教育であった。また、看護師自身の感染予防行動が重要であるとも考えていた
「便益」成果が誰に/どのように役立つのか
今後、在宅医療の感染予防に関する研究を行うときに、どのような優先順位で研究を行うべきかの指標となる
まとめ
今回は「訪問看護師による、感染リスク患者の特定とそのリスク軽減戦略:質的インタビュー調査」の論文をご紹介しました。
日本でも入院期間の短縮・在宅医療の推進がなされているなか、感染症の発症を防ぎ、もともと持っている病気の悪化や再入院を起こさないようにすることが在宅医療の重要な役割になりつつあるようです。
しかしながら、病院のように徹底した衛生管理を行ったり、物品を揃えたりするのが難しい在宅医療の環境下においては、これまでの、病院の環境下であることを前提に作成されてきた感染予防ガイドラインが通用しないことが多々あります。。
今後、在宅医療の感染予防策を確立するために研究を積み重ねていく必要がある、ということがよくわかる論文でした。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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