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『実践政策学 – Policy and Practice Studies』に論文が掲載されました

ななーる訪問看護デベロップメントセンターの研究員 石川武雅 による研究論文が、学術誌『実践政策学 – Policy and Practice Studies』に掲載されました。

 

論文タイトル

過疎地域における医療・介護資源と費用推移の構造的特徴
―全国市町村データ(2015〜2022年)の二方向固定効果モデルによる検討―

掲載誌!

研究概要

本研究は、日本全国の市町村を対象に、過疎地域と非過疎地域における医療・介護資源および関連費用の年次推移の違いを明らかにすることを目的とした、生態学的パネルデータ分析です。

2015年から2022年までの8年間について、全国1,741市町村の公的統計データを統合し、人口当たりの医療資源、在宅・介護資源、ならびに医療費・介護保険給付費を分析対象としました。過疎地域の定義には、「過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法」に基づく区分を用いています。

主な分析指標

  • 医療資源:病院数、一般診療所数、在宅療養支援診療所数

  • 在宅・看護資源:訪問看護ステーション数、訪問看護師数(常勤換算)

  • 介護資源:特別養護老人ホーム定員、介護老人保健施設定員

  • 費用指標:一人当たり総医療費、一人当たり入院医療費、要介護認定者当たり介護保険給付費

市町村固定効果および年固定効果を同時に調整する二方向固定効果モデルを用い、「過疎地域 × 年次」の交互作用項により、過疎地域と非過疎地域の推移の傾きの差を推定しました。多重検定による第1種過誤を抑制するため、False Discovery Rate(FDR)補正を行っています。

主な結果

  • 過疎地域では、病院数・一般診療所数・在宅療養支援診療所数の増加が、非過疎地域よりも大きい傾向がみられました。

  • 一方で、訪問看護ステーション数および訪問看護師数の増加は、過疎地域で有意に小さいことが示されました。

  • 費用面では、過疎地域において総医療費および入院医療費の増加が抑制される一方、介護保険給付費はより大きく増加していました。

結論と意義

本研究は、過疎地域において「医療資源の相対的縮小」と「介護資源・介護費用の拡大」が同時に進行している構造的特徴を、全国規模の時系列データにより明らかにしました。

特に、医療と介護を横断して担うことが期待される訪問看護資源の増加が、過疎地域では相対的に緩やかであるという結果は、在宅療養支援体制の脆弱性や、医療的ニーズの未充足リスクを示唆します。

今後、回避可能入院や救急搬送、在宅死割合などのアウトカム指標と資源配分との関係を検討することで、過疎地域における医療・介護提供体制のあり方をより実証的に評価していく必要性が示されました。

論文の詳細:https://doi.org/10.69287/ppseb.11.2_235

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